江戸の
道中膝栗毛
武蔵野の尾花がすゑにかゝる白雲と
今は井の内に鮎を汲む水道の水
借金は富士の山ほどあるゆへにそこで夜逃を駿河ものかな
初編
弥二「さつきの女が
北「ヲヤほんにか、いつのまに約束した
弥二「そんなことに、じよさいのあるのじやアねへ。さつき手めへが湯へはいつている時、げんなまでさきへおつとめを渡しておいたから、もふ手つけの
北「コレあねさん。おめへおらが
女「イヽヱヲホヽヽヽヽ
北「イヤわらひごとじやアねへ。コリヤアないしやうのことだが、あの男はおへねへ
ひそひそものでまことらしくいへば、女きもをつぶせしよふすに、北八づにのり そして足は年中
それに又アノ男の
女「もふおやすみなさいませ トそうそうたつて行。弥二郎ざしきへはいり、すぐによぎをかぶつて
弥二「ドレふところを、あつためておいてやろう
北「いめへましい。こんやのよふにうまらねへことはねへ。やけどをして弐朱かねはふんだくられる。そのうへ、アノうつくしいやつを、そばで抱てねられて、ほんにふんだりけたりな目にあふハ
弥「へヽヽヽ、かんにさつし。こんやアちつとうけにくからう。ちくるいめ、こたへられぬ、ハヽヽヽヽヽ。コレ北八、もふ手めへねるか。もつとおきてゐねへ 北八はいさいかまわず
北「ゴウゴウゴウ
弥二「もふきそふなもんだ
トひとりまじくじして、まてどもまてどもおともなし。なま中さきぜにをやつて、ぼうにふるかと気がきではなく、こらへかねてむしやうに、手をたゝきたてると、やどやのかみさまきたり
女房「およびなさいましたか
弥二「イヤおめへではわかるめへ。さつきこゝの女中に、ちつと頼んでおいたことがあるから、どふぞちよつとよこしてくんねへ
女房「ハイあなた方のほうへ出ました女は、雇人でございますから、もふ宿へ帰ました。
弥二「ヱヽほんにか。そんならよしそんならよし
女房「ハイお休なさいませ トかつてへゆく
北「ハヽヽヽヽヽヽワハヽヽヽヽヽヽ
弥二「べらぼうめ何がおかしい
北「ハヽヽヽハヽヽヽ、イヤこれで地にした。もふ安堵してねよふか
弥二「かつ手にしやアがれ。
ト哀なるかな弥次郎兵へ、北八が姦計とは露しらず、弐百恋しやうらめしのおじやれか
ごま塩のそのからき目を見よとてやおこわにかけし女うらめし